里山吟行
五月一日に珍しく短歌人「青の会」で、里山に吟行に出かけた。月例の歌会を里山(横浜市舞岡公園)に場所を移して開催したのである。題詠と自由詠があり、自由詠のところに吟行で詠んだ作品を当てた。出席者は12名。
この吟行詠を、欠席した会員の数人にお見せしたところ、それぞれの個性が出ていて面白い、と好評であったので以下にご紹介したい(順不同)。どのような場所・情景があったかお分り頂けよう。
裾あげてビニールハウスはさとやまの五月の風をむかえ
入れたり 松村 威
竹の葉を浮け堰の水澄むところ美魚あり緑金の人面魚なり
酒井佑子
みちのべの雛罌粟みれば晩年に俳句をよみし友おもひ出づ
野村裕心
舞岡の道端に食ふカレーパン小川のほとりのげんげを見つつ
長谷川知哲
鶯はささやくように鳴いていし舞岡公園はれやかな空
金 二順
舞岡谷戸かるたの飾らざるよろし「(そ)らは青空田んぼは緑」
斎藤 寛
田おこしををへたる土のところどころれんげ草あかく鋤き
こまれゐつ 川井怜子
とらはれてゐるとおもへり花の名に名辞以前のともしきろかも
伊東一如
竹林にかこまれて棲むひとらありかつて竹とわれら家族であった
花鳥 佰
古民家の前に垂れゐる鯉のぼりしーんとなべてが止まつてをりぬ
小島熱子
春ひと日よき女男(めを)集ひ里山にうたひ交はさむ瓜久保狐久保
時本和子
皮ごろも育ちざかりの竹の子が一枚二枚とぬぎ捨ててゆく
秋田興一郎(天野 翔)