天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

マラソン

アベベ選手(WEBから)

 先日、今年の湘南国際マラソンが開催された。想像を絶すると言えば誇張しすぎだが、ともかくとんでもなく大勢の参加者だった。
 紀元前490年、マラトンの戦いで伝令がアテナイまでの約40kmを走って勝利を告げたという故事にちなんで設けられた競技。1896年の第一回オリンピック大会では、マラトン古戦場からアテネの競技場までのロードレースを行った。距離が42.195kmに決まったのは1921年のことで、1908年の第四回オリンピック・ロンドン大会での距離を採用したもの。女子マラソンは1984年のロサンジェルス大会からである。
 1964年の東京オリンピックで最も印象に残ったマラソンの選手は、エチオピア出身のアベベ・ビキラであった。当時の写真を右にあげる(webから借用)。残念ながら41歳の若さで亡くなっている。1960年のローマオリンピックと合わせてオリンピック・マラソン史上初の2大会連続優勝を果たした。


  マラソンの最後の一人うつしたるあとの玻璃戸に冬田しずまる
                      寺山修司
  アベベ走る群を抜きてはひとり走るリズムに乗りて静かに速く
                      窪田空穂
  折り返すマラソン走者のおほきなる呼吸がわれの呼吸こえゆく
                      志垣澄幸
  折返し地点をマラソン選手等が徒労の如く返り行くなり
                      浜田康敬
  アトランタを走り走りてエチオピアのマラソン選手は故郷
  をめざす               小島ゆかり


  翳りなきもののうつくしさ抜き切りしマラソンのをとめ
  真向(まとも)よりくる         真鍋美恵子


  ニセアカシアのした走りゆく長距離走者(マラソンランナー)の
  緋色の背文字滅びるなかれ        沖ななも


  この街の海沿いの道をコースとし女子マラソンの走る日近し
                      俵谷晴子