天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

海のうた(1)

荒磯海(城ケ崎にて)

 海の語源は、「う(大)」と「み(水)」である。海にかかる枕詞には「いさなとり」「にほてる」がある。古語では「わた」とも読む。海原は「わたの原」とも言った。「わたつみ」は海の神をさした。「荒磯海(ありそうみ)」は、岩の多い荒波の寄せる海岸のこと。


  近江の海夕波千鳥汝が鳴けば心もしのにいにしへ思ほゆ
                     柿本人麿『万葉集
  飼飯(けひ)の海の庭好くあらし刈薦(かりこも)の乱れ出づ
  見ゆ海人の釣船            柿本人麿『万葉集


  海神(わたつみ)の豊旗雲に入日さし今夜(こよひ)の月夜さやけく
  ありこそ                中大兄『万葉集


  海の底奥を深めてわが思へる君には会はむ年は経ぬとも
                     中臣郎女『万葉集
  鯨魚取り海や死にする山や死にする死ぬれこそ海は潮干て
  山は枯れすれ             作者不詳『万葉集


  藤波の影なす海の底清み沈著(しづ)く石をも珠(たま)とそわが見る
                     大伴家持万葉集
  大海に立つらむ波は間あらむ君に恋ふらくやむ時もなし
                     作者不詳『万葉集