さまざまな直喩(11/13)
明治から現代までの傾向として、単純な取合せから複雑な言い回しになった。即ち、状態の喩や対象が名詞で喩が状況 などの増加である。
飾り太刀倭めくなる熊祭 誓子
やさしさは穀透くばかり蝸牛(かたつむり)
岳人等ランチの皿を舐めしごとし
一、二番目は抽象的な独自の感性、三番句は極めて具象的で共感を呼ぶ。
手の薔薇に蜂来れば我王の如し 草田男
ひもじさは嬉しさに似てセルの胸辺
脚光浴びて隙間風めく風情なる
人間探求派らしく、心象風景が主体。下五や上五の字余りが詰屈感を与える。
翔ぶ如く月の大和に佇める 展宏
面倒臭さうなる桜紅葉かな
松虫草手をあげて友来るごとし
通常の感覚とはずれているような比喩に特徴あり。
退院のごとくくらしや秋の門 裕明
辞書入れて露の鞄といふべしや
舌を噛む発音記号春めくや
対象と比喩の関係がいかにも現代風で独特。