天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

副詞―個性の発現(1/11)

ふらんす堂から

はじめに
川崎展宏の全句集を読んでいて気付いたのは、副詞なかでもオンマトペ(擬音語、擬態語)の使用が目立つことである。俳諧・俳句の本質である滑稽を表現する方法の歴史を初期からたどってみると、俚諺、地口、見立て、擬人法、本歌のパロディ、謎解き、誇張などがあり、芭蕉晩年に至って「かるみ」の観点からオノマトペが意識されるようになった。
俳句の骨格は、五七五の韻律(音数律)の中に、明示されないこともある主語(名詞)と述語(用言)を配したものなのだが、用言(動詞、形容詞、形容動詞)を修飾する副詞を用いることで、千変万化の豊かな内容が生まれる。つまり、自立語で活用のある用言の意味の方向を支配する働きをもつ。なかんずくオノマトペに工夫をこらすことで、独創性・特徴が現れる。このことに気付いて意欲的に取り組んだ最初の俳人小林一茶と思われる。それは現代の俳人・川崎展宏にも引き継がれる。
本文では、一般的に副詞の用法につき、芭蕉、蕪村、一茶らと共に川崎展宏(以下、展宏と呼ぶ)の場合の特徴を論じたい。