天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

食のうたー果物(6/7)

 まくわ瓜は、ウリ科キュウリ属のつる性一年草。メロンの一変種で南アジア原産。

 メロンの原産地はインドということが遺伝子研究により裏付けられた。紀元前2000年頃に栽培が始まった、という。日本では中世の考古遺跡から炭化種子が検出されている。

 レモンは、ミカン科ミカン属の常緑低木またその果実。原産地はインドのヒマラヤ山麓という。明治のはじめ、日本で一番初めにレモンが伝わったのは静岡県の熱海で、湯治に来ていた外国人が庭先にレモンの種を播いたのが始まりとされる。

 

  輪切して汁したたれるまくは瓜を指は盛りゆく白埴(しらはに)の皿

                    森本治吉

  卓換へて大きメロンを切りにけりわらひさざめく朝めしの後

                    土岐善麿

  しろがねのナイフの光ひと刺しにメロンの肉をしたたるしづく

                    四賀光子

  ちちははの霊(たま)まつる場もなき室にメロンを食める盛夏の家族

                    大野誠

  ひと匙のメロンに込めし吾が願ひ母は「うまか」と深く頷く

                    福岡 薫

*作者はメロンをひと匙すくって母に食べさせたのであろう。元気になってほしいとの願いを込めて。

 

  檸檬搾り終えんとしつつ、轟きてちかき戦前、遥けき戦後

                    岡井 隆

  夜ふかくしぼるレモンの滴滴の一滴ごとにつのりくる哀

                    山田あき

  四つ割りにしたるレモンの切り口のみづみづと黄の半月をなす

                    大西民子

  言訳を聞かず背を見せゐし妻がしぼりしあとのレモン吸ひゐる

                    大平修身

*作者の感情でもある妻の哀れさが思われる。「レモン吸ひゐる」のは、妻か作者か。どちらでもよさそう。

 

  みづからにもの言はむとし口中の薄切りレモン穴あきにけり

                     篠 弘

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メロン