天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

小池光の短歌―ユーモア(13/26)

◆「われ」の描写(客観視・見立て)3/4

  息つめて引き抜きにけりしろがねのかがやきもてる鼻毛いつぽん
                                『梨の花』
  部分義歯の装填をしてわがからだ冬晴れの中をあゆまむとする   
  久しぶりにぱちんこすれどわづかなる高揚もすでになくなりてをり 
  焼とん屋に「こめかみ」といふメニューありしばしおもへる豚の顳(こめかみ) 
  父の日にむすめがくれし甚平(じんべい)を妻の遺影のまへに置きたり     
  みちばたに灰皿あれば立ちどまり一本吸へり 春がくるかな    
  町なかの岩盤浴(がんばんよく)にわれ行かずわかきむすめら行くとおもへば   
  俎板は洗つたらかならず立てておけとわが娘(こ)言ひたりわれは従ふ 
  一串(ひとくし)に四個を刺せるみたらし団子三個を食へばこと足りてをり 
  木耳(きくらげ)のくにやくにやしたもの食ひてをりあらそひごとを好まぬわれは 

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みたらし団子