食のうたー水、お茶、コーヒー(2/6)
一杯の水をしんじつ冷たしと飲みゐるときにこの救あり
遠山光栄
朝明けとなりゆくひかり人おりて硝子器より硝子器に水移しゐる
真鍋美恵子
夜半ながら起きて一杯の水を飲むある係累を断つ思ひにて
佐藤通雅
暗がりに水求めきて生けるともなき肉塊を踏みておどろく
竹山 広
*原爆投下後の長崎における実体験。
壁むこうの家族とのかすかなつながりか蛇口をとおる朝の水音
下南拓夫
口つけて山に水飲む喜びもやうやく無くて我老いほけぬ
落合京太郎
上空ははるかに冷たきみづあらむ水屋にみづを使ひゐるとき
人見邦子
ゆたかなるものよ壺より平鉢へ移されし水おだやかに澄む
山本かね子
*水に対する思いが独特。平穏な生涯がしのばれる。2020年、老衰で死去。93歳。