食のうたー水、お茶、コーヒー(3/6)
<自然水>買ひて巷をあゆむとき西方十万(じふまん)億土(おくど)赤しも
高野公彦
*<自然水>: 株式会社サーフビバレッジが販売するボトル詰めの国産の軟水。
大きなる鍋のなかにて熱せられふつふつと嗤ひはじめたる水
田村美智代
一息に喉すべりゆく長月のコップ一杯の水のよろこび
大崎靖子
床下の収納庫内に立ちつくし非常時用の飲み水しずか
今井恵子
帰りきて飲む水は身を貫けりじんじんとひとりの夜のはじまり
雨宮雅子
すれちがひすれちがひきて暁の寒九のみづをのみどに落す
高嶋健一
*寒九: 寒に入ってから9日目。1月13日ごろ。
藻のにほひ強まる夏のゆふぐれに妻はアルプスの水買ひにゆく
綾部光芳
*アルプスの水: サントリーの製品「南アルプスの天然水」のことであろう。
カレーズの水と思へばひと口の水もたふとしかみしめて飲む
高橋宗仲
*カレーズ: カナートとも。アジア西部、北部アフリカなど乾燥地帯にみられる水利施設。地下水を、長い地下水路によって集落近くまで導き、利用するもの。