天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

身体の部分を詠むー顔 (4/7)

  硝子戸に映りゐて悲し扁平のわが横顔は東洋の顔
                        青田伸夫
  少女期の輪郭失せし顔ひとつこうこうと濃く紅をひきゆく
                      山埜井喜美枝
  みづからの顔を幻に見ることもありて臥床(ふしど)に眠をぞ待つ
                       佐藤佐太郎
  七十年生きて来しかばわが顔のさびて当然に愁ただよふ
                       佐藤佐太郎
*老年になるほど自分の顔が気になるようだ。

  廻りゐる水晶球に顔ながれ来む世も霙の匂ふわれなれ
                       春日真木子
*「霙(みぞれ)の匂ふわれ」をどう解釈するか。

  ほの暗き未明の水に近づきて自(し)が顔を脱ぐごとく洗いぬ
                       石田比呂志
*「顔を脱ぐごとく洗いぬ」という直喩は、よく分かる感覚である。

  眉逆だち三角まなこ窪みたるこの面つくるに八十年かかりし
                       若山喜志子
*若山喜志子は周知のように、牧水の妻で、2男2女をもうけた。牧水の死後「創作」をついで主宰した。昭和43年8月19日死去。享年80。従ってこの歌は、晩年の作。

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水晶球