天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

食のうたー菓子・スイーツ(4/4)

  この秋はせんべいを焼くどんづまりわが血を濃くし生きねばならず

                     坪野哲久

*せんべい: 小麦粉に卵・砂糖・水などを加えて溶いて焼いた瓦煎餅と、米の粉をこねて薄くのばし、醤油や塩で味つけして焼いた塩煎餅とがある。

 

  せんべいを焼きて凌ぎし昨日(きぞ)のあり土橋(どばし)をわたり木橋をわたる

                     坪野哲久

  東京の下町(したまち)を措(お)きていづこにかかくも味よき煎餅のあらむ

                     窪田空穂

  翁(おきな)さびわがするわざかカステラを切るなり家族不在の家に

                     川口常孝

*カステラ: 室町末期にポルトガル人が長崎に伝えた。小麦粉・鶏卵・砂糖などをまぜて焼いた菓子。

 

  特急券を落としたのです(お荷物は?)ブリキで焼いたカステイラです

                     東 直子

  しつとりとおもたく満ちてカステラあり杉の木箱を捧げもつとき

                     小池 光

  玄人(くろうと)にまけぬ手際(てぎは)と褒められてホットケーキをまた今宵焼く

                     松村英一

*ホットケーキ: 小麦粉にベーキングパウダー・卵・牛乳・砂糖などを加え、鉄板で丸く平たく焼いた洋菓子。バターやシロップを塗って食べる。焼きたてを食べるところからホットケーキという。

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せんべい