食のうたー櫂未知子『食の一句』(2/6)
三月の句から
*作者は、草餅を焼いている時に天平時代の文化を思ったのだ。
おぼろ夜のうどんにきつねたぬきかな 木田千女
妻在(あ)らず盗むに似たる椿餅 石田波郷
*石田波郷にはあき子という奥さんがいた。奥さんが不在の時に椿餅を食べた感想である。
ほろほろと泣き合ふ尼や山葵(わさび)漬(づけ) 高浜虚子
木のもとに汁も鱠(なます)も桜かな 芭蕉
四月の句から
二串(ふたくし)の花見団子の三色(みいろ)かな 京極杞陽
蕗の葉に煮(に)〆(しめ)配りて山桜 一茶
カステラに沈むナイフや復活祭 片山由美子
主客豪酒春燈の下皿鉢(さわち)あり 松本たかし
*皿鉢: 皿鉢料理(大ぶりの皿に刺身などを盛り合わせた宴席料理)にでる皿や鉢また料理をさす。
蕨(わらび)飯(めし)たいてゐる間をごりの汁 星野立子
*ごり: 一般的にはハゼ類の形をした淡水魚を指す。