天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

汗のうた(3/3)

  一日を共に働きし馬の背に流れし汗の塩かたまれる

                     石川不二子

  若ければ臼ひく腰の官能に汗ばみながら踊りあかさむ

                      春日井建

*上句が鑑賞しにくい。臼をひく時の腰に感じる官能?!。エロティックな感覚か。

 

  ジャージーの汗滲むボール横抱きに吾駆けぬけよ吾の男よ

                     佐佐木幸綱

  汗のシャツ汗のサイゴンに脱ぐときの祖国への愛みだりがわしき

                     佐佐木幸綱

*下句の解釈が難しい。「みだりがわしい」とは、規律・礼儀・風紀などが乱れていることをさす。盲目的に祖国を愛している、と感じたのであろうか。

 

  汗のシャツ枝に吊してかへりきしわれにふたりの子がぶらさがる

                      時田則雄

  朝早く漁網おこし来て遅刻せし子に近寄るに汗匂ひたつ

                     内野芙美江

*漁網をおこすとは、打ってあった漁網を引き上げることであろう。

 

  刻落とすサウナの中の砂時計たかが汗だと言ってくれるな

                      本田千恵

*砂時計: 透明な中空の管に入れた砂の落下で経過時間を計る。測定開始から一定の時間を計測するタイマーの役割。調理時間、学習時間、ゲームの制限時間、体温計の計測時間、サウナ風呂の入浴時間等、数秒の誤差が結果に影響を及ぼさない用途の時間を測るために使用される。

 

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砂時計