天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

鳥のうた(6/12)

  空わたる鳥に肺癌ありやなしや聞くべくもなきあかつきの声

                      前川佐美雄

  夜を翔ぶ鳥のむれありそのこゑの痩せたる風土に沁みとほるなり

                       轟 太市

  まさびしきことなからむに羽毛ふかくくちばし埋めて鳥のねむるよ

                       穴澤芳江

  遂げよとて空のまほらを行く鳥は小さく赤き日に入りゆけり

                       河野愛子

*まほら: すばらしい場所。まほらま。まほろば。

 

  いのち持つ一つ鳥なり荒海のしぶきをからく逃れつつ飛ぶ

                       田谷 鋭

*からく: やっと、かろうじて。

 

  水界の峠は越えよ舞ふ白きひとひらの身のかなしくば、鳥

                       成瀬 有

*水界:  地球上の表面の水によって占められている部分あるいは水と陸との境界。

 

  豆畑の白きを越えてゆく鳥のくらき韻きはただよひ始む

                      辺見じゅん

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豆畑