天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

わが歌集からー鳥類(3/15)

鵜   32首

  隅田川河口に荒き波立てり黒き河鵜の潜(かづ)き息づき

  身をかがめ波に浸りて魚を狙ふ黒き鵜の二羽待てど獲らざり

  同居せる檻の狭きにいらだつや背黒鴎を川鵜がつつく

  飛び立ちて海面すれすれ羽ばたける海鵜の行く手釣舟の列

  濁りたる春のうなさか海鵜飛ぶ沖ゆく船は石積むらしも

  奥深き三河の海に棲む海鵜魚飲み込みておもおもと翔つ

  頼りなく飛び立ちてゆく鵜の群のゆくへ思へり弁天島

  さざ波の浜名湖砂州の白砂に黒き縞なす海鵜の群は

  いさなとり相模の海の波抜けて海鵜飛び立つ次々に翔(た)つ

  水仙の花咲く道をのぼりきて断崖に見る海鵜の岬

  あからひく朝の光に背を向けてウミウの群れは岩壁に立つ

  炯々(けいけい)と沖を見つめて動かざる黒き海鵜は僧のごとしも

  海底を覗く漁師の舟近くウミウは黒き首を立てたり

  箱めがねのぞきてたぐる竿と梶小舟かたむく海鵜の岬

  断崖の木々をま白き死に染めて黒きウミウのコロニーはある

  篝火(かがりび)の炎ふくらむ時に見ゆ魚吐き出す鵜(う)の長き首

  幸(かう)若(わか)の謡(うたひ)ひびかふ長良川かがり火はじけ鵜舟くだりく

  きよろきよろとあたり見回し羽根ひろぐ衆人環視の池の鵜の鳥

  境川河口を発ちてたわたわと川上めざす黒き鵜の鳥

  鵜の鳥は動かざりけり江ノ島の行きと帰りに見し岩の上

  しらじらと花ちり敷ける池の面に波紋たちたり鵜の鳥浮き来

  潜(かづ)きては浮かぶ鵜の鳥突堤の先を回りて港湾に入る

  幾たびも水を潜りていたる鵜の羽ばたき重く飛び立ちにけり

  白鷺の前に浮び来上流へ水面をかけて河鵜発ちたり

  海鵜見て波打際に残したるわが足跡を消す春の潮

  潜(かづ)きては浮かぶ海鵜の湾内にぬつと入り来る「ジョージ・ワシントン

  潜水の二羽のウミウがしばしして水際の鷺のまなかひに浮く 

  つらなりてウミウの黒き編隊が沖よりきたる三番瀬の空

  港内のあまたのブイのそれぞれにウミウとまりて風上に向く

  それぞれの岩にウの鳥佇めど風さむければ羽根ひろげ得ず

  うかび来し鵜は青鷺の足元に 顔見合はせて驚きにけり

  浮びこし海鵜めがけて降下せる鳶の鉤爪水をひつかく

 

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