わが歌集からー鳥類(7/15)
カモメ 16首
さはさはと川面の空にはばたける朝を目覚めし白百合鴎
同居せる檻の狭きにいらだつや背黒鴎を川鵜がつつく
打ち寄する波を避けざるユリカモメしばし休みて潮風に乗る
ユリカモメ浜に集ひて闇を呼ぶ一灯点る腰越漁港
ユリカモメ冬の岩場に群れて立つうす桃色の水掻きの足
数かぎりなく波の上に散らばれり光の粒の白ゆりかもめ
漣痕(れんこん)の岩礁(いくり)に群るるかもめ鳥晩夏の風にはばたきて啼く
いつどこに屍(かばね)さらすやかもめ鳥波間にあまた群れて憩へる
春風を白き帆に受け帰り来るヨットの群を待つカモメ鳥
氷川丸つなぎとめたる鋼索に朱き足並めかもめつらなる
一様に同じ向きむくゆりかもめ船を繋げる鎖にならび
信濃川にごれる水の早ければ白き鴎は流されにけり
突堤に腹ばひ眠るユリカモメ今日のひと日をいかに過ごさむ
釣舟の帰りを待つか腰越の港につどふトビ、ユリカモメ
一羽発ち五、六羽発てばいつせいに飛び立ちにけり砂洲のカモメは
さはがしきカモメの群を避けて佇つ池のほとりの一羽アオサギ
鳶 14首
断崖の空に集ひて翔りくる鳶に投げ餌の民宿の窓
鳶あまた飛行せる空江ノ島の岩屋の裏に焼くバーベキュー
空高く舞ふ鳶の目が射とめたる地上の蛇は蛙を狙ふ
手に持てる食べ物襲ふ鳶ならむポールの先の眼するどき
城ヶ島上昇気流に遊弋の何を狙へるこの鳶の数
要塞の跡の石垣くづほれて空に鳶舞ふ秋の猿島
写さむとカメラ構へて仰向けど鳶は流るる春の疾風(はやて)に
破れ蓮のごとき翼をひろげたる鳶のうかべり灯台の空
釣舟の帰りを待つか腰越の港につどふトビ、ユリカモメ
地にあれば引き剝がさるる鳶などもかろやかに浮く野分の風に
浮びこし海鵜めがけて降下せる鳶の鉤爪水をひつかく
断崖の谷吹きあぐる潮風に翼ひろげて鳶は浮かべり
鳶の舞ふ青き空よりもみぢ降る小栗判官眼洗之池