わが歌集からー樹木(10/11)
咲き満てる河津桜の山腹を人つらなりて九十九折(つづらおり)ゆく
小雨ふる桜まつりの山にゐてリーマン予想に囚はれてをり
谷間をうづむるほどに咲かせたしおかめ桜の根府川の郷
青空に辛夷つのぐむ公園は肥満防止の人ら走れる
六月はブルーベリーに桃、李(すもも)もぎとり自由のフルーツパーク
もぎて後三、四日おく桃なれど李(すもも)はもぎてすぐ食べられる
この春も長興山にのぼり来てつつかひ棒の桜を見上ぐ
東海道 京に向かひて見附にはひだり松の木みぎ楓の木
咲き初めし桜根方にシート敷き酒酌み交す倭人といふは
蒔田から弘明寺までを川沿ひに花のさかりの並木見てゆく
青白き川の流れの両岸に枝さし伸ぶる染井吉野は
樹齢千二百年の巨木といふ伐りてくり抜き湯船となせり
湯ヶ島の巨木巨石の露天風呂夫婦わかれて浸りけるかも
大津波跡に残りて立ち枯れし奇跡の一本松は伐られつ
三十年以上も居間の鉢にあり妻が世話する大きカボック
鳥の巣かはた宿り木かふたつほど桜こずゑにかたまれる見ゆ
雲を追ひ森を鳴らして駆けきたり木の芽うながす春の嵐は
紅梅の山門入れば左手に誰姿森元使塚(たがすがたもりげんしづか)あり
菩提樹と海紅豆立つ山門をくぐりて出会ふ光松の裔
涛音にそだてられたる大松のあまた立ちたり橋立の森
頼朝の無表情なる像ありて桜もみぢははや散りはてつ
紅葉の林のなかにしづまれり吾妻神社と浅間神社
紅葉の道はいそぎて通るべしカメラかまへて待つ人あれば
颱風に裂かれし幹の大木は倒れしままに放置されたり
よろこびを白き花さく野に見れば山の桜も間なく咲くらむ