歌人を詠むー茂吉(1/3)
茂吉翁の地下足袋はけるさながらに人立てる見ゆ太鼓店の前
鹿児島寿蔵
黙し立つ茂吉先生におづおづと吾の近寄る明方の夢
結城哀草果
懐中にサックを携帯せし茂吉ふさ子を隠しきりし茂吉よ
阿木津 英
歌会の後斎藤茂吉先き立ちき皆溌剌として溝にほふ街に
茂吉先生ピカソを蔑(なみ)したまはざりき後の世のため言ひておくなり
柴生田 稔
紙帳の中一字に苦しむ茂吉がゐると思ふ時代も永久に過ぎたる
河野愛子
聴禽書屋の古りし柱を縁側の手摺を撫づれば茂吉が臭ふ
小国孝徳
うつつには見(まみ)えざりしがつきかげにうつうつとして眞紅の茂吉
恵まれて雲のかげもなき蔵王山頂茂吉の歌碑は聳えてありき
吉野昌夫
寝ねぎはに読みつつさみし戦はぬ茂吉が兵を鼓舞する数首
丹波真人
月山の雪嶺照りて紅刷けり茂吉のつむりまぶしみをれば
前 登志夫