わが句集・平成二十八年「延寿の鐘」
秋風に延寿の鐘を撞きにけり
豊作や竹ロケットを打つ秩父
子供らが案山子を笑ふ畦の道
息切れて琵琶の阿弥陀寺もみぢ狩
見つむればふくら雀が首かしぐ
菜の花や路傍に夢のあるごとく
鎌倉や春日をこばむ牢格子
犬猫の慰霊碑かこみ梅真白
うららかや束子供養の小天神
春雪のかがやく富士を目の当たり
かたくりの花にはらばふ山路かな
ひき当てし大吉むすぶ柳かな
葉桜のおほひかむさる東司かな
倒壊の家屋にまどふ里燕
なつかしきこゑ空にあり初燕
落ちてなほかたちとどむる桐の花
伊勢志摩の真珠をおもふ今日の月
溜池の水を田に引く蛙かな
鳩の屍や大暑の風に羽根散らし
炎帝が見下ろすふたつ力石
舞殿に横笛涼し八幡宮
夕立をあやぶむぼんぼり祭かな
木洩れ陽は夕陽となりぬ夏木立
水ひけば川岸の草刈りはじむ
孫たちにスマホで送る雪景色
歳晩の波音を聞く円位堂