天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

同窓会(続)

初冬の湖畔

 相部屋の相棒のいびきがひどくて熟睡できなかった。おまけにやけに朝早く起きて居間の机でなにやらごとごとしているのが耳につき、たまったものではない。しょうがないので明けやらぬ空を見上げて硫黄湯の露天風呂に浸かった。
 ゆっくり朝食をとった後は、流れ解散。早々と宿を出た。桃源台から海賊船に乗って箱根町へ回る。船では、帰りの他のふたりと共であった。総じて、箱根の紅葉には少し早かったようだ。湖畔が真っ赤に色づくのは、今月末であろうか。


   明けちかき遠野の原に目覚めけり野鴨の声のはつか聞こゆる
   暁をはや起き出でし友ありて椅子に坐れりなにか書くらし
   にごり湯にひたり見上ぐる星空のところどころに雲
   ただよへり


   うつぶせにベッドに寝ねて耳すます湯上り後の心臓の音
   芦ノ湖の海賊船に乗り合はせかたみに語るこの後の生
   できるだけ働くといふ心臓を移植して得しいのちかなしも
   來む春の再会期して別れたり箱根を越ゆるそれぞれの道
   別れきてひとり佇む公園にさしぐむばかりもみぢかへるで
   涼やかにをみな坐りしこのあたり黒田清輝「湖畔」の構図
   復元の槌音高き関所跡千人溜りをシートにかくす

  
        くぐもりて啼くは山鳩冬の朝
        関所跡笹子鳴くなる杉並木