天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

黄葉の北鎌倉

 午前中を円覚寺明月院で過ごした。午後一時からは、短歌人・十一月の横浜歌会に出席。
円覚寺仏殿の掲示板にめずらしく俳句が書かれていた。
        雨風の恩を染め出す紅葉かな

説教臭がするのはしかたない。境内は、紅葉を探る観光客で混み合っていた。これは明月院でも同じ。今の時期には、本堂後庭園を開放している。ここは夏の菖蒲の季節にも開放される。入場料は五百円と高い。


        白壁に朝影うつす紅葉かな
        弓道ゆらり舞ひ込む朴落葉
        墓場には烏集へり谷戸紅葉
        石段のしらじら続く石蕗の花
        遠近(をちこち)に栗鼠なきわたる紅葉かな
        山茶花や砂地に長き石の影
        小春日の水音たかき禅の庭
        万両や屏風の漢詩詠み難し
        黄葉の北鎌倉をかなしめり
        日の玉や冬西空に膨れ落つ

   おほかたは枯れはてたれど朝光に四つ残れるコスモスの花


歌人・十一月の横浜歌会から。題詠は「木の実」。

   どんぐりのころげゆくさきこれよりはしらじらまみゆ
   〈駐車お断り〉              酒井英子
   *「しらじらまみゆ」が、特異な表現だが、解釈のポイント
    である。どんぐりがころがってゆくが、これから先は
    〈駐車お断り〉の看板が白々とある場所に入る、という意味。
    ただ、この場所が私有の駐車場なのか、道路に面した空き地
    なのか不明である。「しらじら」は、駐車お断りという排他的
    な言葉に白けた気持もこめているのであろう。

わが歌は、
   料亭が買ふのだらうか公園の銅像下に干せる銀杏(ぎんなん)
   *上句の発想が新鮮で面白い、と好評であったが、下句の主人公
    が公園に住むホームレスであることまで読んでくれる人はいなかった。

自由詠からは、
   ハイヒール脱ぎて歩めばふるさとは水際きらきら秋のささめき
                        三良富士子
   *上句は大変魅力あるが、下句があいまいで頂けない。
    ふるさとを感じさせる具体を読み込みたい。

わが歌は
   百歳を生くるインコのともしきろ動物園の坂につまづく
   *着眼がよい、とこれも好評だったが、年寄りくささが面白く
    ない、との意見も。