天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

花辛夷

荏柄天神

 鎌倉大蔵幕府跡の背後の山陰、頼朝の墓に向かって右上方斜面に大江広元の墓があるが、これを整備したのは、長州藩の学者村田清風(天明三〜安政二)である。毛利家の始祖としての大江氏を尊重する態度の表れであった。村田清風がここを訪れた際に詠んだ俳句
     むかし語りをきくきくむしる尾花哉


が見つかり、明治二十三年九月に句碑として建立された。小さなものだが、墓地に向かう荒れ果てた階段の下に風化して残っている。


     石楠花と躑躅交配絵筆塚
     合格のお礼の絵馬や梅若葉
     ぼあんぼあんぼあん垣根越えたる紫木蓮
     垣根越え枝の伐られし桜かな
     風やみし墓地にちるなり花辛夷
     うぐひすのしゃっくり啼けり谷戸の墓
     
  合格のお礼の絵馬を掛けにくる梅の若葉の荏柄天神
  青鷺が天を仰ぎて首のばす青葉しげれる木立の梢
  おほいなる巣をつくるらし青鷺の雄がはこべる長き枯れ枝
  中島の木立の末に巣をつくるアオサギの声池にひびかふ
  池の上の高き梢に身じろがぬコサギは突如ものを落とせり
  白鷺のおとせるものの音したり鯉の背鰭のゆらぐ池の面