天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

万作

北鎌倉・東慶寺にて

 今年も鎌倉のそこここの寺の境内で、万作の花が目立つようになった。真冬ながら新年になって金色にちりちりと咲き広がる花の様子は、先行きに希望が持てるような気分にさせる。縁起のよい植物のひとつ。金縷梅ともいうマンサク科の落葉小高木で、がく片四枚の内側は暗紫色。



  大寒の日は短くてマンサクのほそき花弁の縮れふかくす
                      春日真木子
  春はやく咲きでてまんさくの花淡し小田原高長寺透谷の墓
                      久々湊盈子


      青鷺の影ゆるがざる春日かな
      舎利殿に読経ひびかふ梅の花
      鐘鳴って坐禅終りぬ春の朝


  池の辺に人目恐れぬ青鷺が影歩まする如月の朝
  そこここに杉の梢の枯れたるがほたほた落つる東慶寺墓地
  石古れど供華新しき墓あれば偲ばるるかも生前の徳
  川下にあゆむコサギの白き毛を逆立てて吹く如月の風
  川下にあゆむコサギの足首の黄なるがかなし如月の朝
  足首の黄なるコサギが川下にしまし歩みて川上に翔つ