天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

わが夜の窓に息づく守宮かな

やもり

 昨日の日記で、近藤芳美が亡くなった日付を間違って書いたので、訂正しておいた。六月二十一日が正しい。
我が家の窓に夜毎守宮が現れる。「家守」「壁虎」とも書き、俳句では夏の季語である。


  マンションの三階にあるわが部屋の窓に今宵も守宮あらはる
  わがむかふ机の窓に夜毎くる守宮は白き腹みせてをり
  じろじろと腹を見つむる視線かと気づくや守宮少しみじろぐ
  白き腹窓におしつけ息づける守宮はオスかメスか見分かず
  オスメスの違ひを見むとくる顔をいとひて守宮桟に隠るる
  時折に頭めぐらしわが部屋の様子を見るか今宵も守宮
  わが指と守宮の指と見比べて霊長類の行方思へり
  共に棲むこの世なればといとほしく守宮を待ちて窓に向へり
  
という訳で、今日は横浜動物園・ズーラシアに出かけた。


  わが前に双子のをみな座りたり見比べたればふたりとも笑む
  人間の作れる巣箱に卵産む尾羽みじかきカンムリシロムク
  この暑き日本の梅雨も気にとめず夢をむさぼる朝のバクは
  沢水の音ここちよく眠れるかスマトラトラの姿は見えず
  木の枝に身を横たへて息づける気位たかき雲豹二頭
  偶蹄目ウシ科なりけり哲学者然と佇むゴールデンターキン
  をさな等の声聞こえぬか無視するか竹にたはむるレッサーパンダ
  元気なく腹這ひ眠る梅雨じめり餌残りたるアオバトの檻
  首たてて姿勢正しくわれを見るキジ目キジ科ベニジュケイはや
  食肉目イタチ科といふカワウソの泡ふきもぐるガラス水槽  
  この主の脱毛白くかかりたり杉の梢をゆするオオワシ
  腹いつぱい餌食ひたれば水槽にもどりて泳ぐフンボルトペンギン
  頭から必ず魚を呑むところ子供等に見すペンギンの檻
  をみなごの三つ子並びて手をふれり群よこたはるライオンの檻
  木を渡るオナガザル科のダスキートン身体の倍の尾を立ててゆく