天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

國のちから

 三月になった。靖国神社拝殿社頭の遺書掲示を見に行った。配布用のビラには、はじめに明治天皇の次の御製が載っている。
    年へなば 國のちからと なりぬべき
    人をおほくも 失ひにけり


 遺書の主は、戦艦大和と共に九州坊ノ岬南方沖に沈んだ海軍工作兵曹長。享年二十九歳。


  軍人の無上の誉と書き残す言葉遣ひにみだれはあれど
  こまやかに親にたのめる嫁のこと海軍工作兵曹長
  我家にて居辛くなれば家出でて自活の道を妻に許せと
  嫁なればわが子と思ひて愛せよと親にたのめり二十九歳
  再婚の道あれば妻にすすめよと親に言ひをく大和魂
  坊ノ岬南方沖の海底に兵と沈める戦艦大和
  妻のことたのみますとぞ書き置きて戦艦大和と死を共にせり
  無駄死と嘆きたまふやすめろぎの御製を読めば怒り湧きくる