天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

むくげ

鉄砲宿にて

 アオイ科の落葉低木で、中国が原産地。挿し木でよくつく。園芸品種も多く、花の色には、紅紫、白、ピンク、青紫などがある。朝開いた花が夕方には萎むはかなさから、人の世に譬えて「槿花一日の栄」という言葉が生まれた。平安朝までは、朝顔と混同されていたらしい。秋の季語。



      道のべの木槿は馬にくはれけり  芭蕉
      高野へと心急かるる白木槿    川崎展宏


 遊行寺境内には、白木槿百日紅が咲いている。この木槿は、白祇園守という種類らしい。通常見かける右上の写真のようには蕊がはっきりしていなかった。それにしても、百日紅がもう咲いているとは。
 家に帰ってテレビをつけたら、どのチャネルも新潟中越沖地震の報道でテンヤワンヤであった。8月初めに「短歌人・夏の歌会」が、新潟で開催される。周辺の町もまわってみようと思っているのだが ・・・。


      権現はむくげ花散る祠かな
      啼き交はす鴉野分の過ぎし寺

      
  ほたほたと白き木槿の花ちりぬ俣野大権現の祠に
  西に向き手合はす一遍上人の像のうしろに百日紅咲く
  境内の熱き砂地にうづくまる雌に雄鳩は啼きてすり寄る
  注連巻ける太き銀杏の木隠れに鴉は嗚呼と啼きにけるかも
  一山を寄贈したればまつらるる地頭は俣野大権現に
  釘打てる音発々とひびきたり野分の後の遊行寺の庭
  本堂の仏拝まむ若夫婦老いたる母の尻押し上ぐる
  賽銭を投げてをろがむ観世音母を背負ひてきざはし下る
  線香の煙を胸にかき寄せて長生き願ふ老婆と息子
  近づけば泥まきあぐるザリガニの小栗判官眼洗之池
  小栗堂裏手の庭にしづもれり判官主従、姫と鬼鹿毛
  照手姫が建てしと伝ふ三体の厄除地蔵泣き笑ひせる