天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

残暑の候

由比ガ浜

 九月に入って最初の月曜日。海水浴場に軒を並べていた海の家が取り壊され始めた。南方洋上に台風が発生し、小笠原諸島に近づいているが、その兆しは湘南の海にまだ見えず、凪いでいる。


      潮引くやうち壊さるる海の家
      黒犬の二頭放てる浜の秋
      黒犬が口開けて追ふ赤とんぼ


  夏逝きて片瀬の浜にうち寄する祭の名残ごみのさまざま
  うち寄する夏の名残の白波にごみが帯なす湘南海岸
  逝く夏を惜しみて泳ぐ湘南の海に群なし水母ただよふ
  スカートの裾たくしあげ貝ひろふ 子の手を引きて若き母親
  サーファもヨットも消えし鎌倉のなぎたる海に秋風が吹く
  鉄分をふくみて黒き砂浜に何を語らふ鴉の群は
  逝く夏の浜の鴉ら争ひて砂にまみれし死魚をつひばむ
  平らなる海に一筋波たちて白くくづるる稲村ケ崎