天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

ウミウの岬

ウミウの岬

 久しぶりに城ヶ島に行った。京急三崎口からバスで東岡まで。そこから歩いて見桃寺(桃の御所跡)へ。見桃寺を詠んだ白秋の歌を次に一首。
  見桃寺冬さりくればあかあかと日にけに寂し
  夕焼けにつつ


ここから更に歩いて北條の入江を回り大椿寺(椿の御所跡)へ。大椿寺を詠んだ白秋の歌を次に一首。これは三崎を去った白秋が十年の後、前田夕暮とここを訪ねた時の歌である。
  この寺が大椿寺ぞと入り来て寂しと出でぬ日暮を二人


次に大橋を渡り城ヶ島へ行く。白秋記念館に寄った後、ウミウの岬へ。白秋は、城ヶ島の鵜を次のように詠った。
  三崎城ヶ島は鵜の鳥島よ潮のしぶきで鵜が育つ


毎年十月下旬になるとウミウ、ヒメウが渡来、翌年の四月までとどまる。


      秋風の大橋見上ぐ白秋碑
      秋されどウミウまだ見ぬ岬かな
      鵙啼くやウミウ、ヒメウの姿なし
      赤羽根の尾根道くれば笹子鳴く


  死の一年前に訪れ祝はれし桃の御所跡白秋の歌碑
  白秋の歌くちづさみ桃の御所、椿の御所を訪ねて疲る
  小魚のあまたおよげる北條の入江なつかし遊郭の跡
  北條の入江にもやふ釣舟の白きがまぶし秋の日差しに
  白秋が寂しと去りし大椿寺八十年後は園児らの声
  秋潮のしぶきひときは白かりきウミウを待てる岬
  断崖(きりぎし)


  馬の背の洞門越しにわが見たりトンビあそべるウミウの岬
  ミウくる空を想ひて霜月の岬見てゐる白き渚に
  丈低き尾花なびける海岸に波音きけば寂しからずや
  霜月に入りても来ざる鵜の鳥は気候変化に気づきたるらし
  はとバスをつらねて来たる生徒らが岩場にあそぶ秋 城ヶ島