天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

春の城ヶ島

城ヶ島にて

 ウミウの岬の海鵜を見たくてまたやって来た。前回は時期が早くて一羽も見ることができなかったが、今回はかなりの数がいた。この岬には、ウミウの他にヒメウ、クロサギが棲む。断崖はこれらの鳥の糞で白い。北原白秋は一年ほどをこの島に暮らし、詠んだ歌を『雲母集』にまとめて再生したが、彼の足跡を白秋文学コースとして観光の目玉にした人が、今は亡き元市長で俳人の野上飛雲氏であった。見桃寺の白秋歌碑、白秋記念館、宮柊二歌碑などの建立にも尽力した。『北原白秋 その三崎時代』の抄として、冊子「『雲母集』を歩く」という好著がある。


      ひろげ干す烏賊の白さや春の浜
      春風や赤き漁網をつくろへる
      春の鳶港の空の美声かな
      寒鰤の背鰭見えたる生簀かな
      鳶鴉鴎が集ふ島の春
      呼び込みは鮪どんぶり島の春
     
  白秋と俊子が住みし洋館の面影さがす向ケ崎に
  道に沿ふ水仙の花枯れ初めて香り朽ちたり雲母の島は
  荒波にうちあげられて干乾びし若布が臭ふ海鵜の岬
  鵜の鳥が羽根やすめたる断崖の下に傾げり若布刈る舟
  砂浜に白き貝殻ちりしけば砂になるらむ百年の後
  城ヶ島岬の巌しろく染めヒメウ、ウミウクロサギが棲む
  馬の背は立入禁止洞門の中に見えたる海鵜の岬
  白秋がかつて詠みにし歌あれば足をとどむる城ヶ島
  すべりくるポリスチロールの白き箱いまだあぎとふ活〆の鯛
  鳶、鴉、鴎ならべばひときはに鳶荒々し羽根の逆立つ
  鳶、鴉、鴎の群るるなぎさ辺を猫が見てをり城ヶ島の春
  丘に立つ二基のプロペラま白きが仲良くまはる春風の中