天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

中原中也(2)

 ところで、パネル展示されている詩を見ているうちに、童謡詩人の金子みすずの情緒によく似ていることに気づいた。年譜を見比べて驚いた。生涯がかなり重複している。

         生年   没年     出身地    
金子みすず   1903年 - 1930年   山口県大津郡
中原中也    1907年 - 1937年    山口県吉敷郡


 みすずと中也は、それぞれ26年と30年という短い生涯を生きた。中也は、中学生の頃から短歌を始め文芸に関心を持った。みすずの作品は、1923年(大正12年)から世に知られるようになる。中也十六歳、「ダダイスト新吉の詩」を契機に、詩を指向する時期であった。同郷の山口県から童謡詩人として有名になったみすずの作品を中也が全く知らなかったとは考えにくい。ただ、両者の境涯を考慮すると、みすずの方に厳しく澄明な詩情があるように思える。中也はダダイズムランボーに傾倒したが、退廃・破滅には向わなかった。中也の方には倦怠からくる甘えが感じられる。みすずには、倦怠が入り込む余地などなかった。


      「日の光」より  金子みすず
   おてんと様のお使いが
   そろって空をたちました。
   みちで出会ったみなみ風、
   (何しに、どこへ。)とききました。



      「湖上」より   中原中也
   ポッカリ月が出ましたら、
   舟を浮かべて出掛けませう。
   波はヒタヒタ打つでせう、
   風も少しはあるでせう。