天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

丸太の森で

 マツ科の常緑高木。雌雄同株。クリスマスツリーに使われることで知られるが、建築材にも製紙原料にもなる。もみそ、とうもみ、もむのき。


  鮎のごとき少女婚して樅の苗植う 樅の材(き)は
  棺に宜(よ)し         塚本邦雄   
  *67576と第三句を中心にして上下点対称の
   句構造。結句、「ひつぎによろし」とすれば、
   素直に7音に収まるところを、わざと6音に
   読ませている。また第四句が句割れを起している。
   異様な内容を異様な構造で表現しているところが、
   前衛短歌の先導者らしい。


  樅一樹疾風のなかに揉まれ立つほのほの如きこゑあげながら
                  杜沢公一郎
  *疾風に吹かれてざわざわと樅の枝葉が激しく揺れ騒いで
   いる様子。声が炎のようだという直喩に工夫がある。
   下句が擬人法になっているだけで、きわめて判り易い。