天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

芍薬

大船フラワーセンターにて

 しゃくやく、と読む。ボタン科ボタン属の多年草。アジア大陸東北部が原産で、わが国には、薬用、観賞用として古く中国から渡来した。古名は「えびす草」。ちなみに漢方の処方に当帰芍薬散があり、昔から女性の生理に伴う体調不良、不妊、流産防止などに使われてきた薬という。

      芍薬を嗅げば女体となりゐたり
                   山口誓子
      芍薬のゆさゆさと夜が生きてをり
                   鍵和田釉子
      芍薬をぶつきらぼうに提げて来し
                   長谷川櫂

  咽喉元まで水を満たして芍薬を活けて重たき壺となりたり
                       大西民子
  吾にはげしき夏くる兆し芍薬の花芯にほそきくれなゐ見ゆる
                       安永蕗子

 わが国で和装の美しい女性を「立てば芍薬坐れば牡丹歩く姿は百合の花」と称えたのはいつの時代であったか。実はこの言葉、もとは「碧厳録」にある百丈懐海の禅語という。常住坐臥、すべてが禅に外ならないということで、禅宗の校則『百丈清規』により一挙手一投足を規則で決めた。美しい女性の立ち居振る舞いのことではなかった。


  「傾国の楽(たのしみ)」といふ芍薬の花に想へりかの国の
  美姫(びき)


  ルピナスの花禍々(まがまが)し園芸の技に生れたるまめ科植物