天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

源氏物語の千年(1)

横浜美術館にて

 横浜美術館の特別展示会に行ってみた。中年女性の見学者が随分多い。「源氏物語」に女性が惹かれる理由がよくわからない。貴種の男にもてあそばれる物語なのに。
鎌倉時代以降、土佐派、狩野派をはじめ室町、江戸の時代を通じ現代まで、源氏物語の名場面を日本画家の多くが描いている。近現代の例では、松岡映丘・宇治の宮の姫君たち、安田靫彦・紅葉賀、下村観山・女三の宮、堂本印象・御法、石踊達哉・関屋の月あかり など。
それにしても江戸時代まで草書体で書かれた「源氏物語」がずいぶん多い。残念ながら普通の現代教育を受けた人のほとんどが読めないはず。字体については、正規の教育コースでは教わらないからである。書なり古文なりを専攻した人のみが可能であろう。それが普通に読めた昔の人の学習能力に感心する。
藤原道長の通称「御堂関白記」の国宝・自筆本を見ることができたのはよかった。道長33歳から56歳、995年から1021年に至る日記である。詳しく見れば、誤字・脱字が目立つところもあるようだが、毛筆で丁寧に書かれた漢字の並びは美しい。


      秋暑し吾に読めざる草書体


  源氏物語絵巻の草書体読み得し人のいにしへ思ほゆ
  飽きもせで貴種の色恋書きつづる世界最古の文学とこそ
  物語書き疲れたる手をやすめ石山寺に月を見上げし
  色恋の人の系図を解き明かす源氏物語評釈もあり
  「桐壺」の書き出し部分を朗読す日本語、英語、アラビア語まで
  読み易き楷書の文字の国宝の気品あふるる御堂関白記