源氏物語
500名近くの人物が登場し、70年余りの出来事と800首近い和歌が書かれた雅な王朝物語だが、この平安時代の長編小説の名は、古写本などでは使われていなかった。つまり、書かれた当時の題名が何であったのかは明らかでない、という。「源氏の物語」、「紫の物語」などと呼ばれていたらしい。
良夜ひらく宇治十帖に雅(みやび)なる姉妹は恋の
あらそひをせず 栗木京子
シャワー無き時代の乱婚 なまぬるき春の夜に読む
源氏物語 宮原望子
リラ今朝をむらさき淡く咲かす窓 少女声あげて
「桐壺」を読む 米田憲三
源氏物語を題材とする絵巻物は、複数存在するが、国宝に指定されているのは、藤原隆能が描いたと伝える平安時代末期の作品である。名古屋の徳川美術館(絵15面・詞28面)と東京世田谷の五島美術館(絵4面・詞9面)に所蔵されている。
徳川美術館で絵巻の復元模写プロジェクトがスタートし、その様子がNHK(「よみがえる源氏物語絵巻」)で放映され、感動した。絵巻物の絵の具を成分分析して、現代の絵の具に置き替えて模写する過程で、当時の絵師の高い技術が実感されたという話だが、詳細が具体的に分り興味深かった。