天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

白秋の『雲母集』(1)

短歌新聞社版

 北原白秋が出てきたところで、これから10回にわたって、歌集『雲母(きらら)集』を分析してみたい。何故『雲母集』か?
 この歌集は、大正二年五月から翌年二月までの約九ヶ月間を相州三浦三崎に過ごした生活の所産である。白秋の生涯中最も重要な一転機を画したもので、初めて心霊が甦り、新生がこれから創まった、と白秋自身述懐している。大正四年八月刊行。ちなみに、白秋の今生最後の言葉が、「新生だ」であった。白秋が生涯に二度使ったことになり、『雲母集』の重要さがわかる。
 白秋研究は様々な切り口から数多くなされている。これらの成果を参考にしつつ『雲母集』をより深く理解するためのキーワードをあげて代表歌を鑑賞していこう。
 実は、『雲母集』の背景を知るために、過去何回となく三浦三崎や城ヶ島を訪ねた。城ヶ島観光協会と三崎白秋会主催の「白秋まつり」で、投稿した短歌が特選になり、宿泊付きで招待されたことが二度ほどある。例えば、平成十一年の特選歌は次のものであった。

  竿立てて海底のぞく箱めがね木舟がひとつ入江に浮かぶ


 少し堅苦しい論調になりますが、気楽に読んでください。間に休憩のため、別の話題を入れます。