腔腸動物のハチクラゲ類とヒドロ虫類の浮遊生物の総称ということで、種類は多い。漢字では海月、水母などを当てる。見た印象からきた字である。体の大部分が無色透明の観点質。動物プランクトンを主食にしている。
くらげが出てくるわが国最古の文献は、古事記である。よく知られている次のくだりである。
「 次に国稚く浮ける脂の如くして、海月なす
漂へる時、葦牙の如く萌え騰る物によりて
成りし神の名は・・・・ 」
ところが、万葉集や新古今集には詠まれていない。勅撰和歌集に「くらげ」の歌が初めて出てくるのは、どの歌集なのだろうか。
山の端をいづるのみこそさやけけれ海なる月のくらげなるかな
続千載集・弁乳母
濃き青の四月の末の海に浮く水母の如く愁白かり
与謝野晶子
軍艦は出でたるあとの軍港に春の潮みちくらげ多く浮く
土屋文明
呪文みな海に沈みて海溝の暗きを過ぎてゆくくらげたち
川口常孝
白き海月にまじりて我の乳房浮く岸を探さむ又も眠りて
中城ふみ子
按摩機に体をゆだねて眠りゐる妻の水母のごとき午後かな
時田則雄
(注)「くらげ」は、夏の季語。下村博士のノーベル賞で話題に
なったので、歌の面から調べてみた。