天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

大涌谷

箱根大涌谷

 箱根の大涌谷には、年に一回は訪れるのだが、今年は初めてである。もう紅葉の時期だろうと見計らって上ってみた。ただ、天気予報では晴れるといっていたのに、雨がぱらついてきた。紅葉はこれからが見頃といった状態であった。
箱根湯本から登山電車で強羅へ。そしてケーブルカーで早雲山へ。そこからはロープウェイである。
 大涌谷は、約3000年前の箱根火山最後の爆発によってできた神山火口の爆裂跡であり、ロープウェイの大涌谷駅は標高1044mのところにある。江戸時代までは大地獄とか地獄谷と呼ばれていたらしい。神山の爆発以前の芦ノ湖は、仙石原の湿生花園のところまで広がっていたという。それが爆裂の泥流で二分され、現在のような地形になった。
 湖尻桃源台に下りて深良水門まで林の中を散策した。帰りは、バスで湯本へ。仙石原の芒の原は、小雨のせいで銀色が見られなかった。
 

  美しき駅名はあり風祭、入生田、湯本、塔ノ沢など
  三回のスイッチバックに見わたせり黄葉の山紅葉の谷
  宮ノ下過ぎてのぼれば藪蔭に「いのしし出没地帯」の看板
  ゆくほどに色濃くなれる紅葉の谷に声あぐゴンドラの客
  ゴンドラの客の眼下にひろがれり大涌谷の硫気噴く肌
  股引の足にしみいる冷気はや箱根の山の冬を告げたり
  なに鳥か大涌谷の空をゆく硫気にしましとまどへる二羽
  愛鷹と富士のはざまにうす青く夢とかすめり南アルプス
  一籠の卵ひたせりふつふつと硫気にたぎる熱水の池
  神山の烏帽子くろぐろ立てり見ゆ大涌谷の蒸気の間に
  大涌谷、姥子と下るロープウェイ桃源台は小雨にけぶる
  ゴンドラの窓に雨粒つきたれば滲みて潤む眼下のもみぢ
  あかあかと姫沙羅の木々立てり見ゆ秋ふかみゆく湖畔の林
  湖にボート浮べて釣をする水面しづけき紅葉の木末
  山間に水みなぎれり芦ノ湖深良水門、湖尻水門
  芦ノ湖の水面しづけし水門の外に枯れたる一叢の葦
  野あざみの紫枯れず残りたり芦ノ湖キャンプ村の静かさ
  踏み鳴らす落葉の音のさみしさに吾はいそぎぬ桃源台へ
  運転の目途たたぬといふロマンスカーまたも起きたり人身事故は
  
 [注]ブログの記事を書くのは、現地に行った日から10日くらい
   経っていることもあるので、紅葉の時期はブログの日付と
   違っています。