天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

大磯・旧東海道にて

 カラス科カラス属の鳥の総称。日本には5種が見られるという。ハシブトガラスハシボソガラスミヤマガラスコクマルガラスワタリガラス。後の3種が冬鳥として渡来。道端に出したゴミを食い散らし、だみ声で鳴きたてるので現代でも嫌われ者だ。しかし、知能は鳥類中で最も高いという。
 カラスは意外と歌に詠まれている。万葉集では4首にでてくる。ただ、さすがに美を重んじた新古今集にはない。カササギは3首に出てくるのだが。


  鴉とふ大軽率鳥(おほをそどり)の真実(まさで)にも来まさぬ
  君を児ろ来とそ鳴く          万葉集・東歌
                     
  夜もすがらこひてあかせる暁はからすのさきに我ぞなきぬる
                     和泉式部
  片山のまきの葉しのぎ降る雪を翔(つばさ)にかけて立つ鴉かな
                     加藤千蔭
  ひさかたのしぐれふりくる空さびし土に下りたちて鴉は啼くも
                     斎藤茂吉
  あかときを早や鴉鳴くこゑすれど同じ方向(むき)行くものにも
  あらず                前川佐美雄
                     
  霜どけに降りて鴉のあゆむさま拙きものを吾は見てゐし
                     佐藤佐太郎
  千羽鶴ならぬ千羽の夕からす嗚呼たり 黒き腸(わた)
  しぼりたり              斎藤 史
                     
  晴も褻(け)もあらなく全きぬばたまの黒もて侍る嘴太鴉
  (はしぶと)の生           蒔田さくら子
                     
  枇杷の実のまだ青ければ近づかぬ鴉の顔の孤独なりけり
                     小中英之


 余談ながら、上の斎藤茂吉の歌は、当時気鋭の文人であった芥川龍之介佐藤春夫が特に好んだという。若山牧水の「けふもまたこころの鉦をうち鳴らしうち鳴らしつつあくがれてゆく」という大衆受けする歌より高く評価したらしい。わかる気がする。