天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

蟋蟀

多摩動物園にて

 コオロギ。直翅目コオロギ科の昆虫の総称。ちちろ虫とも言うが、古くはコオロギのことをキリギリスと呼んだというからややこしい。リ、リ、リと途切れながら鳴く。


      こほろぎのこの一徹の貌を見よ  山口青邨
      蟋蟀が深き地中を覗き込む    山口誓子

  夕月夜心もしのに白露の置くこの庭に蟋蟀鳴くも
                    万葉集湯原王

  夕雨にこほろこほろぎうら悲し新おくつきの鶏頭がもと
                      伊藤左千夫

  床のうへ水こえたれば夜もすがら屋根の裏べに
  こほろぎの鳴く             伊藤左千夫


  うちどよむあらしの底にこほろぎは鳴きてありけり
  とぎれとぎれに             古泉千樫
   
  こほろぎの夜啼くこゑを聞きゐれば神代の闇にひびく如しも
                      前川佐美雄

  北窓のあかりのもとに眼はさめてこほろぎの目のあをき秋なり
                      前川佐美雄

  未来(さき)の世も我に憑きくる生きものの信濃の夜半の
  こほろぎの声              斎藤 史