住のうたー風呂・厠・トイレ(2/2)
厠は、数ある便所の中でも古く、奈良時代からみられる。古事記には、水の流れる溝の上に設けられていたことが示されており、川の上にかけ渡した屋の意味で、「川屋」の説が有力とされる。(語源由来辞典から)
厠に来て静かなる日と思ふとき蚊の一つ飛ぶに心とまりぬ
小夜ふけて厠に立てばものうげに蛙は遠し水足りぬらむ
長塚 節
芋畑にしぐれ雨降る音きこゆ昼の厠にしづまり居れば
結城哀草果
不運なりし父の一生(ひとよ)をふと思ひ杉葉散りこむ厠にて泣く
前川佐美雄
階段をくだりきたりしうつし身は月さしている厠にかがむ
岡部桂一郎
夕べ飲みし薬が徐々に効いてきていま快々とトイレに走る
浜田康敬
厠という言葉を使うとその時代が強く感じられる。生活感が生々しい。