蟾蜍(ひきがえる)(1/3)
蝦蟇(がま)、蟇(ひき)などとも言うが、古名は谷蟇(たにぐく)(谷蟆とも表記)であった。ちなみに漢名は蟾蜍(せんじょ)。両生類ヒキガエル科。蛙の仲で一番大きい。動作が鈍いので道路で車に轢き殺された姿をたまに見かける。蚊、みみず、沢蟹などを捕食する。
竹藪に蝦蟇ゐてこゑのする国を逃れて見よといふ如
鈴木幸輔
谷ぐくの啼くこゑ聴きぬ梅雨ふけし或る夜に甕(かめ)の
水流れけり 前川佐美雄
しかれども逆(さから)はず且つ歎かざる蟇(ひき)は棒もて
ころがすに足(た)る 前川佐美雄
いぶかりて妻が見出でしひきがえるの卵嚢の帯夕べは冷えむ
近藤芳美
妻の上に乗りそこね水に落つこちる蟇の不器用(ぶきつちよ)さ
呆れてしまふ 森本治吉
草むらに息づきふかし谷蟆(たにぐく)よわたしの帰る村は
あるのか 前登志夫
朝戸出(あさとで)のわれの門口(かどぐち)塞ぎをるやさしき
蟇は地に蹲る 前登志夫