天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

初秋の吾妻山

オミナエシ(吾妻山にて)

 神奈川県二宮町にある標高136メートルの吾妻山には、秋が来ている。山頂にはコスモスが満開であり、森のいたるところでいろいろな蝉がいっせいに鳴いている。そして山道のそこここには、生を終えた蝉たちが仰向けにころがっている。


      寄る波のテトラポッドに秋の蝶
      仰向けに足掻くかなかなアスファルト
      臨終は皆仰向けに蝉の朝
      蝉しぐれ声聞き分くる吾妻山
      ミンミンや身のしらむほど鳴きしきる
     

  釣り上げし鯵を開きて浜に干す湾岸道路の橋の下蔭
  蝉いまだ手足うごかし仰向けに死を待つらしも朝の参道
  わが視線避くる熊蝉いつしらに桜の幹の位置を移せり
  肉球のくぼみ残れるアスファルト溶け出すごとし炎暑の真昼
  わが死後の骸骨想ふ手のひらを後頭部に当て床に寝る時