独歩の湯には、九種類の足湯がある。足湯しかない。300円の料金が必要。温泉に体ごと入浴するには、すぐ近くにある町営の「こごめの湯」に行けばよい。千円が必要。渓流を散策し、初めて足湯に入った思いを詠ってみた。
黒潮の潮目きはだつ師走かな
朝光にゆらりと落つる枯葉かな
足湯して枯木の空を見上げをり
冬麗の樟高き空足湯せり
大桶の湯があふれ出す芒かな
街川の土手につくれる大根の青き葉むれに朝の日が差す
万葉の湯に浸らむと湯河原の落合橋にバスを下りたり
万葉の土肥の出湯をなつかしみ紅葉狩りゆく渓流の道
水落ちて白き泡たつ青淀にもみぢ散るなり渓流の朝
効能のひとつひとつを確かめて次々に入る足湯なりけり
「平静の泉」に先ずは足ひたしあたり見まはす心穏やか
左目の白内障に効くらむか「肝目の泉」足湯にひたる
便秘にも花粉症にも効くといふ「腸鼻の泉」足裏(あうら)に痛き
湯の石に足裏(あうら)のつぼを刺激して肌若返る「皮口の泉」
年の瀬にやさしき気持とり戻せわが足浸す「思考の泉」
高血圧、動脈硬化、胃の病ひそれぞれに効く「脈胃の泉」
「喜(よろこび)の泉」に足をひたしたる老も若きも笑みこぼれたり
頻尿になやめる吾が足ひたし効能ねがふ「腎耳の泉」
内分泌、代謝異常の吾妹子(わぎもこ)に足湯させたき「脾骨の泉」
八百年越えて立ちたる樟の木のま洞にあはれ石仏祀る
はしごせし足湯の効き目あらはれてその一日はほかほかとせり