天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

一年の計は元旦にあり

片瀬海岸にて

 年の初めに当たって、所属する結社誌1月号に掲載されたわが作品を、以下にご紹介します。2カ月前頃に作ったものなので、新年詠ではない。

俳句: 「古志」  5句
       翡翠のつぶてが曲がる滑川
       沢音の鴫立庵に端居せり
       朝顔のすだれなしたる苫屋かな
       火の神を鎮むる祠つくつくし
       酔芙蓉空手に先手なかりけり

去年のわが入選句の内、もっとも評価が高かったのは、次の句であった。
       夢に泣く妻をゆさぶる夜長かな


短歌: 「短歌人」 8首
       仰ぎ見る
  一筋の川をはさめる新旧の参道ありて旧のさびしき 
  祭礼の提灯さぐる軒下にすだれなしたる朝顔の花
  手のひらの豆腐すすりて登りしとふ「とうふ坂」あり大山参道
  雨雲に隠れし山のいただきを仰ぎたたずむ大山下社(しもしゃ)
  登山口の小さき祠に手を合はせのぼらむとする杖の老人
  名水を吐く龍の口泉には銅、ニッケルの硬貨がしづむ
  電動のノコギリの音ひびかへる山の谷川秋ふかくする
  下山して湯に入る後の贅沢はこんにゃく豆腐きやらぶきに酌む