天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

久しぶりの大江健三郎

BShiビジョン映像から

 NHKのBS「プレミアム8 百年インタビュー」の「大江健三郎」を見た。大学の教養課程時代に、芥川賞作家の大江や柴田翔に夢中になったものだが、専門課程にいって以降は、全く興味が失せた。大江の「広島ノート」や憲法九条を守る会の活動を仄聞するにつけ、逆に敬遠するようになった。今回、NHKBSの番組を見て、全面的に賛成したわけでないが、大江の生き方がよく理解できた。大学では、数学を専攻しようかと思っていたというくらいだから、75歳になっても論理は極めて明快であった。
書斎ではパソコンやワープロを使うことなく、何度も文章を書き直す。毎朝の散歩の時も文章の推敲をしている。編集担当者にゲラ刷を作ってもらってから更に手を入れて文体を工夫する。よって元の原稿などほとんど残らない。常に新しい文体の開拓に努める。
 フランス文学恩師の渡辺一夫を終生、師と仰ぎ尊敬していること。国内外の友人を大切にしていること、故郷四国の森の原風景が文学の根底にあること、知能障害を持つ長男の才能を認識したこと、聖書から学んだ「新しい人」の概念 など、あらためて教えられることがあった。ただ、「憲法九条を守る会」については、内向きすぎて依然、なじめない。基本的人権や平和を守る主旨は、誰も反対しない。だが、周辺国がある。外国からの圧力に対して、国民の基本的人権や平和を守るためには、外交力と自衛力が必須である。あれほど軍人と軍隊を毛嫌いした外交官・吉田茂が、首相当時の朝鮮戦争勃発を契機に、警察予備隊自衛隊)を創設した経緯が思い起こされる。国連に絶対的な戦争抑止力があれば、言うことはないのだが。


  散歩する姿に見えてあはれあはれ大江健三郎の生き方