天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

桐の花

湘南国際村センター前の丘陵

 桐の木は、ゴマノハグサ科キリ属の落葉高木。漢語の別名に白桐、泡桐、榮。初夏、円錐花序に淡い紫色の筒状の花をつける。葉にも特徴があり、広卵形の大きな葉をつける。中国が原産地というが、古くから最も軽い良質の木材として、下駄、箪笥、箏、神楽面の材料とされてきた。桐紋は、足利氏や豊臣氏などが紋章として用いた。近代以降、現代も日本国政府の紋章として、旭日章瑞宝章の意匠に取り入れられたり、ビザ、パスポート、金貨などの装飾や、内閣総理大臣の紋章に使われている。


  桐の花露のおりくる黎明(しののめ)にうす紫のしとやかさかな
                       木下利玄
  茶つみうたかすかにひびく岡のへに桐のはなちり風ぬるく吹く
                       尾上柴舟
  折りとりて瓶に挿さまく思へども枝みな高き桐の樹の花
                       植松寿樹
  われの来し湯島聖堂の後庭にむらさきの雲桐の花咲く
                       佐藤佐太郎
  なにかなし野は明るくて高貴なる花桐ひと木憂ひ隔かしむ
                       田谷 鋭
  桐の花むらさきふかしゆつくりと牛鋤けるみゆ東洋の時間を
                       前登志夫
  桐の花咲きし記憶も薄るるに巷に甦る夕ごころあり
                       馬場あき子