天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

夏の夕雲

玄関の前から西空を望む。

 北陸地方は大雨だという。関東地方も夜から雨になるとの予報。日没直後にポストを見に行こうとして北の空を見上げると、右のような異様な形と色の雲があった。あわてて部屋に引き返しデジカメを持ちだしてシャッターを押したもの。数枚の写真を撮っている内に色褪せて暗くなってしまった。
 和歌にもいろいろな雲が詠まれている。八雲、豊旗雲、朝ゐる雲、夕ゐる雲、浮雲、横雲 など。近世以降になると、鱗雲、鰯雲、彩雲、雲の峰 などが加わる。


  八雲立つ出雲八重垣妻ごみに八重垣作るその八重垣を
                 古事記須佐之男
  あしひきの山川の瀬の響るなへに斎槻が嶽に雲立ち渡る
                 万葉集柿本人麻呂
  かくしつつ夕べの雲となりもせばあはれかけても誰か忍ばむ
                 新古今集・周防内侍
  手がかりのありて昇るにあらざれば夏雲は不安すぎて光りぬ
                     斎藤 史
  夏の日は沈まむとして西の空にわきあがりたり抽象の雲
                     吉野昌夫
  動かざる雲なりながら変りゆけり黄金はいつか色失ひて
                     春日井建
  夕雲のにほへる窓は空ふかし滅びむとするもよきかにつぽん
                     成瀬 有
  湧き立ちて紅おぶる雲の峰いつと知らざる追憶に似る
                     徳山高明
  放心に似て時長く夕雲はわが悲しみの上に燃ゆるを
                     初井しづ枝

     雲の峰いくつ崩れて月の山     芭蕉


[注]本ブログの内容は、本日の出来事ではなく、数日前のこととご了解頂きたい。