天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

薔薇(2)

大船フラワーセンターにて

 今の時期に見られる薔薇を冬薔薇という。特別の種類があるのではなく、その季節に花が咲いていれば、そのように呼ぶのだ。同じ木でも季節を変えて花をつけるからである。桜でも春咲いてまた冬にも花をつけることがあるように。


  まだバラに美しさあり逆さ吊り耐えたからこそドライ
  フラワー              高橋禮子


  わが寂しさ知りゐて夕べくれなゐの薔薇のひと枝食卓に置く
                   逸見喜久雄
  中庭に薔薇を育てて来し光ゆるやかに薔薇の枝を曲げたり
                    香川ヒサ
  日だまりにうづくまりゐる猫よりもなほひそけかり冬の
  薔薇の木              石川恭子


  夕光(ゆうかげ)に薔薇剪りたればその白き花びら深く
  黄金蟲ねむる           横竹小夜子


  数知れぬ爬虫の背(せな)は濡れながら薔薇腐れゆく垣を
  めぐりぬ              大野誠