天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

ユズリハ

江ノ島にて

 ユズリハ科の常緑高木で雌雄異株。名前の由来は、春、新芽がでるときに、その場を譲るように古い葉を落すことにある。この葉は、正月の飾りに使う。親が子を育て家が代々続いていくように見立てて縁起物としたのである。古名はユヅルハ。漢字では、譲葉、交譲木、杠、楪、弓弦葉 などを当てる。万葉集の時代から歌に詠まれている。

  あど思(も)へか阿自久痲山(あじくまやま)のゆづる葉の含(ふふ)
  まる時に風吹かずかも       万葉集・作者未詳
                    
  古に恋ふる鳥かも弓弦葉の御井の上より鳴き渡り行く
                    万葉集弓削皇子
  旅人に宿かすが野のゆづる葉の紅葉せむ世や君を忘れむ
                    夫木集・よみ人しらず
  ほろほろと落葉こぼるるゆづり葉の赤き木ぬれに春雨ぞふる
                      長塚 節
  ゆづり葉の新芽かはゆしやはらかきみどりもたぐる桃いろの茎
                      木下利玄
  ゆづる葉の紅ぬらす今朝の雨みぎりの雪をいたく解かしぬ
                      土屋文明


  歳末の朝のひかりのおだしきに滴るごとしユヅリハの実は
  ゆづるはの広葉に及ぶ朝光(あさかげ)に房なせる
  実の黒きむらさき