天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

早春賦―鎌倉・鶴ケ丘―

鎌倉鶴岡八幡宮にて

 初春の鶴ケ丘八幡宮東慶寺を訪れた。八幡宮の宝物殿で、例の台風で倒れた大銀杏の一部が展示されている、との記事を産経新聞の朝刊で見たのがきっかけであった。
八幡宮の源平池には薄氷が張っていた。ぼたん園では、恒例の寒牡丹が今を盛りと咲いていた。東慶寺では、木瓜、蝋梅、白梅、紅梅、水仙などの花に出会うことができた。


     薄氷の解け初む池の浮寝鳥
     首青き鴨の浮寝や薄氷
     傘さすや「聖代」といふ寒牡丹
     寒さうに島大臣(しまのおとど)は薦被り
     寒牡丹八千代椿と名付けたる
     天衣とふ白き牡丹はうす汚れ
     連鶴(つれづる)とふ三つま白き寒牡丹
     薄氷の上を鶺鴒ちょこちょこと
     「貴婦人」とふ白きも咲けり寒牡丹
     ぎんなんを炒る音高し初詣
     初春の厄除大祭鶴ケ岡
     大銀杏の木霊を買ひぬ初詣
     屋根越しに白梅見ゆる東慶寺
     板塀に蝋梅の影ありにけり
     青空に紅梅を見る東慶寺


  あらたまの紺糸威大鎧このうつし世に着る人もなき
  聖天行法功徳円満秘密教有楽自筆の金字の写経
  若宮の横に立ちたる柏槇はピサの斜塔のほども傾く
  倒れにし大き銀杏の垂乳根のひとつを展示宝物殿に
  その昔(かみ)の静御前の舞殿にピアノとバイオリンの
  ライヴを


  倒れにし大き銀杏の切れ端を木霊やどると買ふ初詣
  冬枯れのもみぢに差せる朝光を撮らむと寄りぬ翁と媼
  歌人の墓詩人の墓とくらぶれば詩人の墓に花の絶えざる